高等法院は9月19日に一年の仕事をおえて、長い休暇に入る。彼らの大半は土地を持つ法服貴族なので、休暇中は田舎へ赴いて作物の収穫など、畑仕事をしたりする。11月12日から始まるが、この日は開廷式のみで、裁判が始まるのはそれから一週間後。
原告と被告の代わりに法廷の中心に立つのは、弁護士と代訴人。前者は法学部のエリートだが、後者は裁判所の一見習いから始まり、その方面の知識を実地で叩きこまれた人たち。代訴人は本来、書類を作成したりなどの役割を担っていたが、実際は弁護士以上に様々な権限を持ち合わせている場合がほとんどだった。トゥルーズなどでは弁護士を使わず、代訴人が独断ですべてをやりくりしてしまうことも多かったようである。
裁判を書面審理か口頭審理にするか、依頼人と相談する役目は代訴人が担っている。そして書面審理の場合は弁護士が書類を作成し、書類専門の評定官に提出する。相手の弁護士が反論してきた場合には、それに対する反論も弁護士が作成したりする。口頭審理の場合は6時のミサに出席し、7時からは審理が始まる。口頭審理にしても書面にしても、弁護士が作成したそれらの文章は、すぐに印刷され出版された。当時は裁判に関するまとめ本のようなものが出版されており、シリーズ化していた。弁護士の口頭弁護はある意味、雄弁さや説得性を競うパフォーマンスでもあったから、市民たちは弁護士の言動や名言などを知りたがった。